幸せだな、と単純に思う。 テレビさえつけていない無音の空間。 時たまエアコンが唸りをあげる程度。 彼の吹きかける息の音だけが聞こえる。 邪魔な音はない。 あたしはこの無音の空間が大好きだ。 「ねぇ」 あたしはマグカップを持ったまま顔を上げては話しかけた。 すると彼は吹きかけるのをやめ、顔を上げた。 「ん?」