梅雨も半ば、昼過ぎから降り出した雨の中、佐藤愛歌は急いでいた。
「もう、うっとおしい雨ね!遅れちゃうじゃない」
進まないタクシーを降り、小走りに向かうのは小さなホール劇場だった。知合いに招待されたファッションショーを見るためだ。
ホールが収容されているビルの入口が見えてきた。
愛歌は更に急ぐ。その途端、ヒールを滑らせてしまった愛歌は勢いよく転んでしまった。
「痛い…」
足の痛みに立てないでいる愛歌に雨が降り注いだ。
「あの…大丈夫ですか?」
そんな小さな声と共に、濡れる愛歌に傘を差し掛ける者がいた。
愛歌が顔を上げると、制服姿の少女が心配そうに愛歌を見つめていた。
「ありがとう。大丈夫と言いたいところだけど、足を捻ったみたいなの。もし時間があるなら、手を貸して貰えないかしら?」
困った顔の愛歌に、少女は小さく微笑んで頷いた。