『誰??』
と、少女は俺に問う。


『誰だろうな…』
俺は自分自身に聞いてみたが、答えは出そうもない。
ただ、名前はあった。


『ナディ…スナークス。俺の名前だ』


『ナディ…?』


たどたどしく、言葉を一つずつ辿るように話す少女は微かに、淋しい表情を見せた。


でも、それでいて優しい表情。
どことなく、あの人に似ていた。
『私』を抱き締めたあの人に似て…我慢強くて、自分のことより他人のことばかり考えてしまう人。


でも、今はもういない。

少女はゆっくりと俺に手を伸ばした。



『行きたい…』