そう…国を出たのは、もう数年も前になる。
俺は傭兵や用心棒、護衛なんかの仕事を転々としていた。
これでも、母さんと父さんは俺が暮らせるだけの財産は残してくれていたから不便じゃなかった。
母さんは、父さんが殺された後…追うように病がちになり、半年も経たずに亡くなった。
母さんは…父さんを愛していたから。
俺には淋しそうなまなざしをむけて、息を引き取った。
父さんは…
あまり思い出がない。戦争に駆り出されていて、15年も家に帰って来なかった。
敵の捕虜になっていたから、母さん達は…生きていると知らないで死んだものだと、ずっと思っていた。
だけど、戦争が悪化して父さんが敵陣にいることが分かった。
あの頃は…
何故か、どうしようもない想いを持て余していた気がする。