「じゃじゃーーーーんっ!!」
楽しいことをしている時間と言うのはあっという間に過ぎていくものである。それと同時に周囲が見えなくなるもので、俺はちょっとしたミスを犯した。
「…おぉっ!!おいなんだよー!!お前ぇー!!!!ギター弾けんのかよー!?言えよーぅ!!」
突如現れた横山健一…けんちゃんにギターを弾いているところを見られてしまった。そう、彼とは古くからの付き合いである。それが故に我が家の合鍵の隠し場所までこの男は把握しているのだ。
聞くと、我が父と母は久しぶりに帰宅したかと思うと二人でデート、優は部活へいったんだそうな。美術部って、家で絵書くだけじゃないらしい。よくわからない世界だ。………いや、だから、何で俺が知らない家族の行動を知っているんだよ。
「い、いいいいや、弾けないよ?つーか弾いてたって言うよりかき鳴らしてたっつーか、てきとーにやってたっつーか、父さんのが偶々出てきただけっつーか…っ!!」
それどころではなかった。
俺は努めて冷静にギターを押し入れにしまっ…おうとしたが、いやいやいやっと間にけんちゃんが割って入ってきて妨害された。
「お前嘘下手すぎだろ。なになにー?こっそり練習して先輩に想いを歌にして伝えるのかよー?よー??」
ああ、油断した。
ホントにめんどくさい奴に知られてしまった。まぁ学校が違うから広まることを恐れることはないから…いいか。
「なんだよそれっ。今時はやんねぇよ。」
まとわりついてくるけんちゃんを振り払い、自室を出る。
ズカズカと階段を降り、冷蔵庫の中の麦茶を二人分用意する。
「じゃあお前、逆に聞くけど沙耶先輩となんか進展あったのかよー?もう顔も忘れられてるかもよー?つーか彼氏いるかも…。」
ぐぅうっ。痛いところをついてきやがる。俺だってそんなことわかっているんだよ。


