それからもう一日、通常授業と言う名のオリエンテーションがあったが、学校には何とか間に合った。もう、全く。ホントに朝つらい。助けて。もし俺に妹がいなかったら死んでいたかもしれない。つらい。助けて。
…因みに、俊太君といったラーメン屋は確かに分かりにくいというより、ラーメン屋ではなくその佇まいは倉庫だった。気になるお味は普通に美味しかった。
…はっ、いかんいかん、あまりにもこの間違った日本語が普及してきてしまったが為につい無意識で使用していた。でも、きっとわかりやすいよねっ。
話を戻すと、海鮮ベースのラーメンは好き嫌いがあるだろうが、俺はわりと好きだった。恐らく、俊太君はもういかないんだろうと思う。随分渋い顔をしていたから。
さて、そんなこんなで進級最初の休日。どういうわけか休日に限ってめちゃめちゃ早起きだったりする。今日なんていつもより2時間も早く起きたものだから、太陽よりも早起きだった。
休日の密かな楽しみがある。
基本的に俺は趣味と呼べるものを持ち合わせていない。そりゃ、人並みに読書や映画鑑賞、音楽だって聞くけれど、それを趣味っていっちゃうのって違う気がする。だって、もっとそれが好きで好きでしょうがない人だっているのだから。…と言いながら、誰にも言っていない、俺の趣味。
押し入れからギターを取り出す。元は赤色だったのだろうが色褪せてボロボロのその手触りがなんとも心地よい。このアコースティックギターは父さんが昔持っていたものらしく、それが何故か俺の部屋の押し入れから出てきた。以前からちょっとだけ興味があったので父さんに弾き方なんかを聞いて、ちょっとずつ練習した。こそこそ練習を続け、漸く一通りコードを弾けるようになってきた。長かった…半年。ホント長かった。
別に隠すことないじゃん、と我が妹は言うのだが、俺は花のセブンティーン。こんな趣味を晒せば「あいつなにチョーし乗っちゃってんの」となり、「あーモテたいのね、そーいうことね」となる。俺クラスの人間がこんなかっこいい趣味をさらすその先にある末路はこうだ。そんな風になるくらいならば、俺は部屋でこっそり自分の好きな曲を自分の好きな時に弾ければ十分。人前で、弾こうなどと。人前で…弾こうなどと。まぁ、仮に人前で披露しても「何アイツキモい上に下手くそなんだけど」と言われるのが関の山だろうが。
朝っぱらから心地よく弾きまくる。ああ………楽しい。
今日は銀河鉄道の夜を練習しよう。歌うのも気持ちいいものだよね。最近は一人カラオケなんて流行っているけれど、お金掛かるし…っというより、もしカラオケに一人で乗り込む勇気が俺に備わっていたのなら、きっと、もっとリア充してると思うのだ。
…楽しいから、いいもんねっ別に。


