「いいか、甘瀬。先生は今とても悲しい。何故か?お前は1年の最終日も遅刻した。そもそも、昨年1年間はもう遅刻しなかった日を数える方が早いくらいだ。当然、お前が遅刻した回数と同じだけ先生はお前に注意し続けた。鬱陶しいと思っているかもしれないが、先生だって好きでいってる訳じゃない。とうとう一年では治らなかったよ。だから、先生はこのままではいけないと思って、お前に来年からはしっかり遅刻を通知表に記載するともいった。そうでもしないと、社会に出てからお前が困ってしまうからだ。それで、この話をした時、お前は言ったんだよ。-2年生になった俺を見ていてください-ってな。漸くわかってくれたんだなっと思って先生少し嬉しかったよ。…それが初日から遅刻だよ。はっきり言うと先生は甘瀬に失望した。お前を信用することが、先生もう出来ないよ。大学の紹介も専門学校の紹介も、就職先の企業も、お前みたいな信用できない人間を送り出すことは出来ないから、どこも紹介したくない。協力もしたくない。でもそれは教師としてしなければいけないことだから先生はやるよ、大人だからね。でも、間違いなく後回しにしてしまうだろうね。皆はちゃんと、眠くても辛くても頑張って起きて学校に来ているんだよ?そろそろ自分がおかしいってことに気が付こうよ。お前と同じく、電車で1時間掛かる子達だっているんだから。そう言う頑張っている人から応援してあげたくなるものだろう?先生も一応人間だからね。先生の話、わかるよね?なんなら先生がモーニングコールをしてあげようか?」
学校に到着し、教室に入ろうとすると丁度HRが終わるところだった。俺はスッと後ろからクラスに溶け、まるで初めからいたようにサブバックを机に置き、号令にあわせ礼をした。椅子に座ろうとしたその瞬間、山中先生に呼び出され、すぐ傍の使用していない教室の中へ。←いまここ。
1年間もこう説教をしていると、もうトゲが凄い。1学生に対する説教じゃない。新卒社会人をいびり倒す上司クラスだ。社会人じゃないからわからないけれども。
だが、残念なことにこちらも伊達に1年間説教を受け続けていない。先生のトゲある攻撃を右から左に受け流し、かっこよくいうと馬耳東風り、時にこちらへ同意を促すときは、はい、仰る通りです。時に間が空いたものならば、すかさずすいませんでした。を挟む。これはやり過ぎるといけない。困るのは君自身だから別に謝らなくていいと、意味のわからないことを言ってくるのだ。
1時限目のチャイムが鳴り響く。窓から射し込む陽射しは温度を上げ、輝きを増す。照明のついていない教室は存外薄暗く、より一層外が眩しい。
「すいませんでした…」
教室を出て頭を下げてから、自分のクラスへと戻った。


