ないすとぅみーとぅゆー


目が覚めると、陽は昇り始めたばかりのようで、新聞配達の原付の音が早朝の静寂を切り裂いていく。ゆっくりと布団から這い出る。うぅ、寒い。久しぶりにスッキリ目覚めることが出来たというのに。まぁ、お腹も空いたし、リビングへ降りる。

「…あら、珍しい。おはよう。」

目覚めると母さんが忙しなくキッチンを右往左往している。本当に、朝優以外にあったのは数年ぶりかもしれない。いや、決して大袈裟でなく。

「おはよう。なんか寒くて目が覚めちゃってさ…。」

「今日は雨が降るのかしら。どう新しいクラスは?あ、担任の先生は一緒なのよね?あんた毎回通知表にもう20分早く起きれるように生活改善を…なんて書かれてたけど、いい加減優頼んないで起きれるようになりなさいよね。家は私以外みーんな朝弱いみたいだけど……きっとパパに似たのね、可哀想に。」

うぐぐ…。せかっく朝早く起きたというのに、説教をするのが山中先生から我が母に変わっただけじゃないか。なーにが早起きは三文のとくだ。これなら眠れないにしても暖かい布団の中で微睡んでいた方が幾らかマシだ。ぐすっ。


結局俺は、そのあと起きてきた優にまでも「いっつもこれくらい早く起きてくれたらいいのに」とプレッシャーを掛けられ、もう家にいたくないっ、しらないもんっぷんっ、と家を出てきてしまった。家族に攻められるのが一番辛い。特に家の女性人は容赦ない。死んじゃう。俺が豆腐メンタルなら盗んだバイクで走り出すレベル。

時計を見る。なんと何時もより1時間以上早い。なんて無駄なんだ。
無駄すぎる。せめて朝ご飯くらい食べてくるべきだった。あまりの辛さに耐えられずつい出てきてしまったのだ。

…コンビニで菓子パン買お。

とぼとぼと、駅に向かって歩き出した。深い溜め息を吐いて。