「オセロ強すぎだろ!」

「てめぇが弱いんだ」




ニヒルな笑いを残す先輩。

テレビの中で、未だに除夜の鐘の音は響いている。

ものの5分で決着がついた。



私が屈辱に屈して震えていると、

組の皆さんはけらけら笑って言った。



「若は勝負事に強いからなぁ」

「若の負けたとこみたことねぇよ」

「でも若、スマブラだけは弱いんだぜ」



最後の方に詳しくお話を伺いたいが、

残念ながら私はスマブラがものすごく弱かった。

無念。










「そろそろですね」

「あと3分か」

「カウントします?」

「180秒か? ちょっと長くねぇか」




くく、と静かに笑う先輩。

スマブラ談義でうるさくなった大広間から出て、

すぐの縁側に二人で座り込む。

先輩が持ってきた電波時計でカウントダウンはばっちりだ。



賑やかな大広間からの声が、東雲家の庭の静かな空間をゆらした。

月光が、張り詰めた冷たい時間を中和するように、優しく落ちる。



「二人で数えれば、意外に短いもんですよ」



先輩を見れば、瞳だけをちらりとこちらへ向けた。