「オセロ強すぎだろ!」
「てめぇが弱いんだ」
ニヒルな笑いを残す先輩。
テレビの中で、未だに除夜の鐘の音は響いている。
ものの5分で決着がついた。
私が屈辱に屈して震えていると、
組の皆さんはけらけら笑って言った。
「若は勝負事に強いからなぁ」
「若の負けたとこみたことねぇよ」
「でも若、スマブラだけは弱いんだぜ」
最後の方に詳しくお話を伺いたいが、
残念ながら私はスマブラがものすごく弱かった。
無念。
*
「そろそろですね」
「あと3分か」
「カウントします?」
「180秒か? ちょっと長くねぇか」
くく、と静かに笑う先輩。
スマブラ談義でうるさくなった大広間から出て、
すぐの縁側に二人で座り込む。
先輩が持ってきた電波時計でカウントダウンはばっちりだ。
賑やかな大広間からの声が、東雲家の庭の静かな空間をゆらした。
月光が、張り詰めた冷たい時間を中和するように、優しく落ちる。
「二人で数えれば、意外に短いもんですよ」
先輩を見れば、瞳だけをちらりとこちらへ向けた。

