ちらりと弥刀ちゃんが僕を窺った。
「美味しい」
「本当?それはよかった」
弥刀ちゃんは笑った。
純粋な子供みたいに、嬉しそうに笑う。
「すごい、上手」
「普通ですよー。そんなに美化してくれなくてもいいから」
照れているのか、僕に顔を向けない弥刀ちゃん。
この子は案外照れ屋さん。
毒が入っていたのかもしれない。
僕は不意にそう思った。
だって、舌先は甘さで痺れるし、頭がぼんやりする。
喜ぶ弥刀ちゃんの顔を見ると、どうしても何か黒い渦が巻く。
自分でも何か、わからない。
これは、何の毒なんだろう。
そこからは2人とも無言だった。
弥刀ちゃんは照れている。僕は何も喋る気が起きない。
ただ、痺れるような甘さのプリンを食べていた。
弥刀ちゃんはこんなに男勝りで勇ましいのに、このプリンはとろけるように甘い。
頭がおかしくなりそうだった。

