「ちょっと待ってて」

子供みたいに笑って、弥刀ちゃんは僕に背を向けた。
何だろう。

少し待って、彼女は現れた。
片手にもう1つ器を持って。

「司にもあげるよ。美味しいか知らないけど」

何の下心も無く、素直な笑顔で弥刀ちゃんは、プリンが入っている器を僕に差し出した。

真っ白な生クリームが、薄黄色のプリンの上に乗っている。


「いいの?」
「いいよ。どうせ、あたしが食べるんだし」
「甚三にはあげないの?」
「もうあげたよ」

早く、と僕にそれを突き出す。
僕はびっくりしたけど、その気持ちにこたえてそれを受け取った。

「毒なんか入ってないよ」
「そんなこと思ってないって」

思わず笑ってしまった。
いやでも、この子なら毒を盛る可能性は無くもない。なんて思ってしまいながら。

「いただきます」

小さいスプーンで、それをすくって口に運ぶ。
隣では弥刀ちゃんがプリンを食べ続けている。

甘かった。

ふわふわで真っ白な生クリームと、滑らかな舌触りのプリン。

市販のものと何が違うのか、僕には分からなかった。

口いっぱいに広がる、甘さ。