だけど僕は気にせず弥刀ちゃんの隣に座った。

「今日は何してたの?」

笑顔でそう聞くと、素直な弥刀ちゃんはちゃんと答えてくれる。

「…これ作ってた」

弥刀ちゃんはプリンに視線を落とす。

「え、だってさっきまで筋トレしてたじゃん」
「プリンが冷え固まるまで待ってたの」

ぼそぼそと弥刀ちゃんは呟く。

「案外、可愛い趣味持ってるんだね。料理とかするの?」

一瞬不機嫌そうな顔をしたけど、弥刀ちゃんはすぐに答えた。

「母さんが料理まったく駄目だから、甚三に教えてもらってるの」
「ふ、そうなの。あの人一体、何者」
「居酒屋の息子らしいよ」

甚三の話になると、弥刀ちゃんは楽しそうだ。


不意に、心の中にどす黒い塊みたいなのが渦巻いたような気がした。

自分でもそれが何なのかわからない。
僕はそれを振り払って、笑顔で弥刀ちゃんを見つめた。

この子は子供みたいに素直で、心が洗われるような気分になる。
今までしてきたこと、全部無かった事にするような。


「そうなんだ」

そう言うと、弥刀ちゃんは何か思いついたように立ち上がる。

ふわふわのミニスカートが揺れる。