少し歩くと、右側の1番奥の部屋に着いた。
此処なのかなぁ。

僕は襖を開けた。
何もない部屋だった。

畳と、天井に電気、正面に窓、部屋の片隅に布団。
基本的に寝泊まりする為だけの部屋らしい。

あぁでも、悪くないかも。
余計な物が嫌いな僕にとっては丁度良い部屋かもしれない。

まぁいいか、此処に居座るつもりもないし。
この部屋がついてくるのは魅力的だけど、これを引き換えに僕の自由はあげられない。

僕は襖を閉めた。

階段を下りて、気晴らしに弥刀ちゃんの部屋でも覗いてみようかなー、と弥刀ちゃん自室の襖を開けた。

顔だけ覗かせると、すぐに彼女の嫌そうな声が僕を迎えてくれた。

「何の用?」
「そんなあからさまな態度とらなくても」

思わず苦笑してしまった。
弥刀ちゃんに視線を落とす。

彼女はプリンを食べているようだった。

休日の弥刀ちゃんは、ちょっと新鮮だ。
制服とジャージ姿しか見た事が無かったけど、休日は私服が見られる。

その性格からはあんまりイメージできない、女の子っぽい格好が中々型にはまる。
嫌いじゃない。

「…何そんなに見てるの」

襖の隙間から顔だけ突っ込んでいる僕は、相当変態に見えるだろう。
僕はそれに今更気付き、弥刀ちゃんの部屋に滑り込んだ。

僕が部屋に入った事に、弥刀ちゃんは良い顔をしない。
まぁ、当たり前と言えば当たり前。