「うるさい!あたしの休日を邪魔するな!!父さんなら奥に居るから」
「うん、ありがとう」

しっしと僕を追い払うように彼女、弥刀ちゃんは手を振った。

僕が本気でびっくりするくらい、筋肉馬鹿だ。本当に、全身筋肉なんじゃあないかな。


この家は本当に大きい。

一部屋一部屋が大きいのもあって、移動するのにも大変だ。

廊下が長い。
そして必ずどこかにやくざが居る。まぁ勿論、このお家柄だからだけど。


「辰巳さーん」

襖の前で声を掛けると、野太い声は返事をした。

「おう、司か。入れ」

ゆっくりと襖を開けた。
肘掛に持たれて、彼は新聞を読んでいた。


「今日はどうした?体調は戻ったか」

少年のような顔で、辰巳さんは僕に笑いかける。

僕はその笑顔が苦手で仕方がない。

「…うん、まぁ」
「弥刀が添い寝してくれたんだろぉ?さぞかし心地良かっただろうに」
「なにもしてないって。」

僕は思わず苦笑した。
第一、あの時僕にそんな体力があるわけがない。
あのじゃじゃ馬を乗りこなすのには、相当な体力が要る。

このおっさん(とあと1人のおっさん)は朝、僕と弥刀ちゃんとの会話を盗み聞きして安堵していたくせに。大人げ無い。