その朝教室に入ると、一斉に司は女子に取り囲まれた。
どうやら、昨日司が休んだことを、女子達は大層心配されていたようだ。
あのひょろひょろ男のどこが、なにが、いいんだろう。
あたしは心底そう思った。
今日1日何もない平穏な日で、ただ1つ、気になっていたことがあった。
ボクシング部の事だ。
司がボクシング部に全勝した(らしい)あの日から、あたしはボクシング部に顔を出していない。
まぁごっつのことだから、意気消沈していることは無いと思うけど。
とにかく、プライトとか自尊心とかが傷付いてないかは気になる。彼らにそんな大層な物があるかは知らないが。
気になるけど、行きづらいのも正直なところ。
どうしよう、今日は顔出すのやめようかな。
一瞬そんな考えが頭を過ぎったけど、いやいやいけない。そんな逃げの姿勢じゃ駄目だ。
あたしは部室に向かった。
ボクシング部の、他の部室と変わらない大きさのドアを開く。
「…あれ」
いつもだったらもう筋トレを始めている時間なのに、今日は部室に誰も居なかった。
今日はジムの日だっけ。いや、今週はもう無い筈だ。
みんなの荷物はちゃんと置いてあるし…。
どこに行ったんだろう。
あたしは取り合えず部室を出た。

