「早く食べなよ。もうすぐ行く時間だし、ゆっくりしてる暇ないよ」
「なんでこの家から学校はこんな遠いわけ」

顔をしかめながら、司はスプーンを手に取った。

「名前で優遇扱いされるの嫌だから」
「あぁ、そう言うこと」

司は妙に納得して、お粥に手をつけはじめた。
口に入れると、ふ、と笑う。

「あのおっさんが作っているようには思えない味」
「あんたねぇ、甚三に言うわよ」
「うそうそ。ほんとにおいしい」

司は嬉しそうに笑った。
甚三が褒められると、こっちまで嬉しくなってくる。


「弥刀ちゃんはココア派なんだ」
「うん」
「僕は紅茶の方がすき」
「あたしと反対。あたしは紅茶よりココアの方がすき」

ふと思った。

「じゃあ、パン派?ご飯派?」
「ご飯」
「ご飯に合うと思うのは肉か魚か」
「魚」

ちょっとびっくりした。
好きなものが、正反対だ。

「べつに、嫌いじゃないけどどちらかといえば、って話ね。と言うか弥刀ちゃんの方がワイルドだよね」
「あたしもだけど。好きなものが違いすぎて面白い。お前おばあちゃんみたいな嗜好だな」
「大人な嗜好と言って欲しいね」






「兄貴、なんか大丈夫そうですよ」
「そうだなぁ。男の家に泊まった年頃の娘が、あんなに楽しそうに食べ物について語っているもんなぁ。まだ何もないな」

男2人は物陰から、すっと身を引いたのは内緒。