家に着いて、あたしはすぐにシャワーを浴びた。

この最近、風邪を引いた時くらいから体が鈍っている。もっと鍛えないと。
あいつや男に負けないくらい、強くならないと。
不意にそう思った。

何でそう思ったのか、考えても考えても分からない。


何でだろう。あたしの“弱い”ところを知ったからだろうか。


弱さは、力だけじゃない。男と女の力の差とかじゃないんだ。

違う、別の何か。


司は“なにか”に強くて、あたしは“なにか”に弱い。


何なんだろう。薄っすらとそれに気付いてるのに、核心に触れる事ができない。

むずがゆい気持ちになって、あたしはシャワーを止めた。


急いで髪を乾かして、甚三が用意してくれたご飯を食べようとした。

そして何故かそこには、司が居た。

「…なんでお前が」
「僕も甚三のご飯、食べたい」

座布団に座る。
目の前には甚三が用意してくれたパンとココアとサラダ。

司の前にはお粥。

「優しいね、甚三って」

お粥をじっくり見て、司は可笑しそうに笑った。
なんの笑みなんだろうか。あたしには分からなかった。

奥のほうからひょこりと甚三が現れる。

「お前ぇに言われたって嬉かない」

至極真面目な顔をして、ドスのきいた声でそう呟いた。
これは本気らしい。

「照れ屋なんだから」

そう司がふざけると、甚三は心底嫌そうな顔をして出て行った。
けらけらと司が笑う。