「もしもし、甚三?ごめんなさい、今起きた」
『おはようございます。お迎えに上がってもいいですかね?』

野太く低い声は、電話越しだと更に迫力がある。

「ごめんなさい、お願いします」

甚三は二つ返事で返して、すぐに向かうと言ってくれた。

「甚三、すぐ来るって」
「…そう。じゃあ、もうそろそろ来るんじゃない?」
「そんなに速く来れるわけないじゃない」
「だって甚三、きみが僕の家に居るって聞いた時の焦り様ったら」

司が苦笑した。

「甚三は優しいの」

過保護でも何でもいい。
甚三があたしの事を、大事に思ってくれているのが嬉しい。


「甚三はきみにとっての何?」

目を細めてあたしを見る。

「もう1人の母さんみたいな感じ」
「お母さん?あの顔で?」

司は遠いものを見るような目で笑った。そんなに変だろうか。まぁ、確かにお母さん顔ではないな。

司がベッドから下りる。
朝が苦手なのか、ぼんやりしているみたいだった。

まぁ、病み上がりだから仕方がないか。