いきなり、頬を掴まれた。
上を向かされて、神谷の顔がうつる。

笑ってない。

「え、神谷、は嫌なの?」
「すごい嫌」
「…そうだったの」

少し、罪悪感が湧いてきた。

「ごめん、知らなかった。」
「本当に、しょうもない理由なんだけどね」

神谷はやっと笑った。
司、か。呼び慣れないな。

「司」
「はい」
「なんか呼び慣れないな。呼び間違えたらごめん」

神谷…司の手を離す。やっぱりまだ熱かった。
司の手がまた体に回る。

本当に、どうかしている。
こんなの恋人の戯れ言じゃないか。お互い、そんな気更々無いのに。

まぁ、きっと司も風邪をひいて人肌恋しくなっているのだろう。

「司、痛い」
「あ、いいね。司って呼ばれるの」
「くるしいっつの」

司の足を蹴る。大人しくなった。

「弥刀ちゃんが近くに居ると、落ち着く」
「それは良かったね」

だんだん司の声が小さくなっていく。
こいつ、眠いんだな。
あたしは黙る事にした。

そしてすぐに、そいつの寝息は聞こえた。