「うん、大丈夫。弥刀ちゃん、寝よ」
「え、いやおいおいあたしは明日学校が…」
「朝甚三に迎えに来てもらえばいいじゃん」
「いや、今来てもらえば…それ以前に、まだ電車出てるし」
「今日はみーんな出てるよ。女の子でしょ、1人で夜は出歩かないで」
「何で神谷が皆出てること知ってんだ」
「昨日、弥刀ちゃんが食べてるときに、辰巳さんが明日来ないかって聞いてきたから」
くそ。悔しいけど、こいつは仮にも次期当主だ。
「あたしは1人で帰れる」
「駄目」
「そこらの男より強い」
ふっと神谷は鼻で笑う。
「病人の腕からも逃げられない女の子の癖に」
腹が立って、体を起こそうとした。
が、すぐに押し込まれる。
確かに、事実だけど。
「ね、観念して一緒に寝よ?」
「…」
「大体、すぐに起きない弥刀ちゃんが悪い」
何も言い返せない。
こいつの言っている事は全て正論だ。
「アラーム、5時に設定すれば大丈夫だよ」
あたしの頭を撫でる神谷。
不覚にも、その大きな手のひらに落ち着いてしまった。
まぁ、確かにそうすればいいか。
寒かったから、神谷の体に体を寄せる。
それに気づいて、神谷があたしをきつく抱き締めた。
「ちょっと、くるしい」
「いい子いい子」
神谷の熱い体が丁度いい。
これは暖房がいらない。
「弥刀ちゃん」
「…なに」
「みとちゃんみとちゃん」
「…神谷、うざい」
「司、でしょ?」
「…どっちでもいい」
「司ってよんでよ」

