胸ポケットの携帯を探る。が、そこに携帯は無かった。
見渡してみると、枕元にあたしの携帯が置かれている。
置いた覚えはないし…
こいつだ。神谷を見た。こいつは何勝手に人の胸ポケット探ってるんだ。
枕元に手を伸ばして、携帯を開く。
画面が眩しくて、思わず顔をしかめた。
え、もう21時。
目の前では、神谷の美しい寝顔。
薬が効いたのか、表情が大分楽そうだ。
「神谷、神谷…」
そいつの肩を軽く揺する。
神谷の目が薄く開かれた。
「どうしたの、弥刀ちゃん」
「悪いが、あたしは帰る。明日も学校だし…」
「今何時?」
「21時だ」
「携帯かして」
神谷はあたしから携帯を取り上げた。
あ、また。
予想は立ったけど、神谷は電話をかけはじめた。
「…もしもし、僕。お嬢、僕の家に居るから。大丈夫、なんもしてないって。明日お嬢に聞いてみな。てことで、明日そっちに帰る。こんな時間にお嬢を出歩かせるわけ?」
一方的に、神谷は電話を切った。

