「じゃあ神谷、ちゃんと寝てゆっくり休むんだぞ。」
「もう帰るの?」
「あたしがここに居てどうする。神谷もゆっくり休めないでしょ」
うーん、と神谷は考え込む。
そして、いつもより気だるそうな目をあたしに向けた。
「あと、ちょっとだけ」
細くて白い腕が伸びてきて、あたしの腰に回る。
病人の癖に、そこそこの力で引き寄せられた。
「ちょっ、と」
バランスを崩して、思わずベッドの上に乗り上げてしまう。
神谷がそのまま寝転がった。
「何するんだ」
「ね、なにもしないから」
あたしの腰に腕が回ったまま、甘く微笑んだ。
あたしの顔は一気に熱くなった。
「ば、馬鹿言うな」
「照れてるー」
そして、有無も言わさず神谷はあたしを自分の方に引き寄せた。
あたしの体は、完全にベッドに沈んだ。
神谷の胸元が、あたしの目の前にある。
さらに顔が熱くなった。起き上がろうとしても、絶妙なタイミングで押さえ込まれる。
「お前は、本当に何を考えているんだ…」
器用に足元に固まっていた布団を引き寄せる神谷。
「いいでしょ、どうせ弥刀ちゃんも病み上がりだし。一緒に休めばいいじゃん。うつした人と、うつされた人同士仲良くしようよ」
いつの間にか体に回る細い腕。
顔をずらすと、神谷の顔がアップでうつる。

