「…そうだ、これ」

司が懐から白い包み紙を取り出す。

「落雁? 」

暗い部屋で目を凝らしてみてみると、白菊。

「弥刀ちゃんにあげようと思って」

司が優しく笑う。

「司のは?」
「僕のは盃交わした時に食べちゃった。これは甚三から貰ったの。甘いもの好きでしょ?」

あたしが甘い物好きだから持ってきた訳じゃないって分かっている。

「僕だけ食べるの、ずるいでしょ」
「…すき」
「えーへーへ、弥刀ちゃんかわいい」
「うるさい」
「すごいツンデレ。…辰巳さんには内緒だよ?」

あたしは白菊を口に入れた。

黒糖の甘みと風味が口いっぱいに広がる。

「…盃は交わせないけど、ね」

お菓子くらいならきっと許してくれるよね?

「もー、なんでそんな泣き虫なの」
「泣いてないし」

司は笑いながらあたしの涙を拭く。
口の中いっぱいに広がる甘さは、司の匂いみたいだった。

落雁で妥協しよう。


「…ちょっと、何してんの」
「ほら、立派な着物に皺がつくといけないじゃん」

帯締めをずるりと抜き取った司の腕をつねった。

「あー弥刀ちゃん」
「ほら、司も起きて。折角の袴がだめになる」
「もうちょっとだけゆっくりしようよー」
「甘えるな」

あたしは起き上がって、司の腕を引っ張った。

「じゃ、仕方ないから下行こうか」

まだ全快じゃないあたしの体を支えて、司は立ち上がる。

あたしは司の温い手をとった。