「うっ」

ガチャン、という音が先にして、あたしはアスファルトの上にうつ伏せで落ちた。

頭真っ白。

い、痛い。体が動かない。これが車か。
違う、そんな場合じゃない。
吹っ飛んでいった。綺麗に吹っ飛んだ。あたしは車道に伸びている状態だ。
お願い、車来ないで。

横断歩道の上でぺっちゃんこのぐっしゃぐしゃになっている自転車(金属)を見て自分が何で生きているのか不思議になってきた。

「すいません、大丈夫ですか」

遠くで声がする。クソ運転手だ。声は男だ。こっちこい、ぶん殴ってやる。
が、固まったみたいに体は動かない。
指先がどうにか動く。ぬるりとした。ちょっとまって、これ血だ。あたしの頭血が出てる。

目が動かせないから、近くに寄ってきた運転手の靴しか見えない。革靴。サラリーマンか。

「いっだ!!」

靴があたしの腹の下に入り、ごろりと空を仰がされた。

「キョウゴクミト」
「!」

全然サラリーマンじゃない。
あたしと同い年か、少し上くらいの男だった。失礼だけど完全に道が外れてる凶器顔だ。

「な、なに、なんだお前」

ずるりと生暖かいものが顔を伝うのが分かって気持ちが悪い。
切れ長の目があたしを冷たく見下ろしながら、電話をかけている。
救急車、ではないな。

ざっと血の気が引いた。