頭が火照って、何も考えられない。

「…離れるわけないじゃん、馬鹿じゃないの??」

また捕まえられて、唇が重なる。

「…だ、って!!!あたしは司には、追いつけない! あんたがどんどんあたしから離れてくんだ」
「なにそれ、何を思ってそうなったの??…2週間僕に会えなくて、寂しかった??」

司は笑っている。
あたしを宥めるみたいに。

「~~~~~~~っ!!!!もう知らない、寝る!!!」
「待ってよ、せっかく弥刀ちゃんと想いがつながったんだったらさ、もっといっぱいしようよ」
「つながってない!!」
「ここに来て、そんな嘘きくわけないでしょ」

司はまた笑った。

やっぱり、僕のことが好きで好きで仕方なかったんだ。

耳元でそう囁いた。

「僕は弥刀ちゃんがだいすきだけど、弥刀ちゃんはどうなの??」

キスしてくれる??
と、女顔負けの上目遣いで自分の唇を指差す。


あたしは何を考えてたんだっけ。
何を悩んでいたんだっけ。

「弥刀ちゃんが何を考えているか知らないけど、僕は弥刀ちゃんから絶対に離れたりしない」

あたしの頭を撫でる。

「…ほんとに??」
「当たり前でしょ、好きなんだから。弥刀ちゃんと離れたら、走って隣に行ってあげる」


後ろを見ると、芽瑠や母さんやマナちゃんたち。あたしのだいすきな人たちだ。
前を見ると、司、父さん、京極のみんな。

どちらもあたしから同じくらい離れていて、とてもじゃないけど手が届かない。

あたしは、1人だ。

「顔あげてよ」

顔をあげる。

前方から、司がいつもの笑顔で歩いてくる。

「僕が、弥刀ちゃんのとこに行くから」


あたしは、勇気を振り絞って、司の薄い唇に唇を重ねた。


「よくできました」
「…うるさい」

司があたしを抱きしめる。
司の胸に顔を埋めて、その甘い匂いをいっぱいに吸い込んだ。

上を向かされて、キスをされる。

あたしの知らないキスだ。

司の舌が、あたしの口内を遠慮なく荒らしていく。

「…や、めろ」
「…ずっとしたかったんだって、いいでしょ??」

あたしは司のネクタイを引っ張った。
司は引っ張られたほうに素直に動く。

「司これ、似合わない」
「仕方ないでしょ、今日は色々あったんだから」

結び目に指を入れて、そいつの首に巻きついているそれを解いた。
形になっていたそれは、ずるりとただの紐になる。

司がジャケットを脱いだ。

「…なんで脱いだ」
「なんででしょう」

にこりと司は笑う。
ごろりと布団の上に寝転がった。