どんどん、差がつけられるのは感じていた。
気付いていたけど、知らないふりをしていた。
どこかで、期待していた。
追い抜けるかもしれないって。
だけど、それは期待だけであった。
司は、どんどんあたしから離れていく。
ライバルだと思ってた。
違う。
あたしは、土俵にも立っていなかった。
今日、現実を突きつけられた。
司とあたしの距離なんて、目で見れるものじゃない。
だけど、どうすればいい??
引き戻るには、もう進みすぎてしまった。
遠くの前のほうには、司や父さん、京極のみんなが立っている。
後ろを見渡すと、芽瑠や、マナちゃん、先生、母さんがいる。
じゃああたしは、今からどうすればいいんだ??
あたしの趣味である筋トレだって、京極を背負うためだけに始めたものだ。
今更、追いつけない司が居る時点で、あたしはどうすればいい??
“強いあたし”を目指していたあたしは、どうすればいい??
もう、そんなのを目指す必要はなくなったんだ。
だけど、次は何をする??何を目指す??
…来てほしい。
どんどん離れていく司には追いつけないけど、司があたしのところに来てくれればいい。
居心地がいい司の腕を、忘れることができないのはなんで??
離れたくないのはなんで??
どうしても、あの唇を拒めないのはなんで??
このままだと、誰も居なくなってしまう。
みんなどんどん進んでいって、追いつけないあたしはそこに座っているだけだ。
ぞくりとした。
得体の知れない恐怖が、あたしを殺しに来る。

