「…ごめん、つい」
「なにが、…つい、だよ」

ごつりと司の額があたしの額に当る。
顔が熱くなる。恥ずかしくて、顔を合わせたくない。ずっと俯いてしまいたくなる。

「…ねぇ、弥刀ちゃん」
「なに」
「本当は、僕のことすきなんじゃないの?」

司が笑った。

「…なにいってんの」
「だって弥刀ちゃん、僕を守りたいんでしょ?」

俯くあたしを覗き込んでくる。
あたしよりも女子らしい行動だ。

「まぁ、言ったけど」
「弥刀ちゃんが男だったら、弥刀ちゃんが守りたいと思える女の子を選ぶと思うんだ。つまり、弥刀ちゃんは女の子だからさ、守りたいと思える男を選ぶと思うの」

核心をつかれた。
芽瑠と言っていることが一緒だ。

「電話聞いてたの??」
「え?何のこと?誰と??」
「聞いてないの??」
「電話は知らない」

司は本当のことを言っているみたいだ。
どいつもこいつも、あたしの頭の中をよく理解しているようで。

「まとめると、守りたいと思われた僕は、弥刀ちゃんの好きな人ってこと」
「どこからそんな自信がわいてくるの??」

司は笑う。

「だって、キス」

その単語が出てきた瞬間に、司の口を押さえた。
本能だ。ここから先は喋らせてはいけないと思った。

「いい!!喋るな!!そのまま息を止めろ」
「キス許してくれた」
「ああああ!!!喋るな!!!許してない!!!」
「じゃあ何で嫌がらなかったの??」
「嫌がる暇もないんだよ!」
「純情な弥刀ちゃんのことだから、びっくりして、何も考えられなくなっちゃったんでしょ?あ、僕のことしか考えられなくなっちゃうか」

へらりと笑う司を殴る。黙らせることに成功した。

「…じゃあ聞くけど、あの女だれ」

司の笑顔が消える。

「知りたい??」
「知りたいというか、私情にあたしを巻き込んでおいて、あたしだけが知らないのが気に食わないの!!」
「ひみつ」

即答だった。
司はいつもの笑顔で、そう言った。

「話せたら話すよ。だからその時まで秘密ね」

茶目っ気たっぷり、しかも可愛い笑顔でそう言った司を無意識で殴り、あたしは部屋を出た。