「神谷ぁ?」
「お前ら、付き合ってんの?」
思わず吹き出してしまう。
「な、ななななななな」
「登校も下校もいつも一緒に居るし、仲よさげだし、誘拐された弥刀っち助けたのって神谷だろ?どんな関係なんだよ」
肩をがしりと掴まれる。
そんな真顔で言われたって。
「付き合って、ない」
「マジか?!」
「マジで」
「じゃあどっちかが好きなのか?」
その言葉であたしは昨夜の司の言葉を思い出してしまう。
「…、大体!ごっつにそんなこと関係ないって」
「…いや、それはそうだけどさぁ!!」
バン。
勢いよく扉が開く音がする。
慌てて振り返った。
「…司、」
そこにはどこか疲れている表情の司が立っていた。
髪が乱れている。大方、女子に荒らされたんだろうという予想はつく。
「…何やってんの」
「いや、これはごっつが」
司はゆっくりと歩いてくる。
「…何の話?」
「いや、2人って付き合ってんのかなって」
ごっつは不機嫌そうに顔を歪ませる。
「…付き合ってないけど」
「じゃあ、神谷が弥刀っちのこと好きなのか?」
司も不機嫌そうに眉を寄せた。
「それ、部長に関係あるの?」
ピリっとした空気が流れた気がした。
息し辛い。
あたしの肩に置かれたままのごっつの手を司が退けようとすると、ごっつがその手を振り払う。
「っ、関係ある!!!俺は弥刀っちがすきだ!!!」
「は?」
つい、声が出てしまう。
誰が?誰を?
「…」
つい、ごっつを見つめてしまう。
ごっつもあたしを見下ろした。
数秒そうやっていると、司があたしを引っ張ってごっつから離される。
「…部長が弥刀ちゃんをどう思ってるか知らないけど、弥刀ちゃんは渡さないから」
「「は?」」
異論を唱えたのはごっつが先だった。
「だってお前ら、付き合ってないんだろ?!てか、そもそも弥刀っちは神谷のもんじゃないだろおおお?!」
ごっつは勢いよく司の胸倉を掴んだ。
司はうんざりしたような顔で溜め息をつく。
もともとよれていたシャツの襟元が更によれる。
あたしもごっつも、司が何を言っているのか理解できない。
なんだ、この状況。
何でこんなに分かんない事が一気に起こるんだ?

