スカートを履いていない。
薄ピンクの乙女度が高いパンツが何も隔てなく見える。
上のセーラー服はぎりぎり着ているって感じだった。黒いリボンが床に落ちていた。
…未遂。
あ、違う、注目するのはそこじゃなかった。
男が2人、僕を見ている。かなり大柄な白いスーツのオッサンと、茶髪。
そして、4人、男が倒れているのも見て取れた。
…弥刀ちゃんが?
僕は思わず眉を寄せてしまった。
弥刀ちゃんはゆっくりと顔をあげた。
黒い髪の毛が頬にべったりとくっついている。
相変わらず、鼻血出てるし(乾いてるけど)痣だらけだし、口も血が滲んでいる。
「つ、かさ…」
震えた声だった。
そんな声を聞きながら、先手必勝、ぼうっとしてた茶髪を殴る。
弥刀ちゃんとしっかり目が合った。
弥刀ちゃんらしくない、どこか怯えているような、恐怖を滲ませた目の色。
「どこの坊ちゃんだよ、ったく、最近のガキは生意気だぜ」
白いスーツを着た男は笑いながら、のっそりと立ち上がった。
熊みたいな体型だ。
そいつの肉付きの良い顔がゆがむ。重い一重の目が細くなった。
茶髪は壁の近くで座り込んでいる。
そうとう余裕そうだ。
「ガキ1人が女にイイトコ見せようたって早ぇんだよ、お・こ・さ・ま」
白スーツはジャケットの内側から、黒いものを取り出した。
銃。
銃を出したことには驚いていない。どうせこうなるとは思った。
当たり前だけど、生身の僕が、銃に敵うわけがない。
そもそも、真っ向勝負とかしようとしてないし。
「ちょっとぉシンヤさん、どうする気ですかぁ」
「俺ぁ面倒ごとは嫌いなんだよ、バラした方が早ぇ」
「誰かに聞かれたらどうすんですか」
「誰も居やしねぇよ、こんなど田舎」
ちらりと弥刀ちゃんを見た。
「つ、か…」
白スーツがそれを撃つ前に、僕は前に踏み込んだ。
白スーツの胸元に入る。それと同時に、耳元で物凄い衝撃音がした。
僕が白スーツの手中に入るのと、引き金が引かれるのは同時。
白スーツは動いた僕に反応できなかった。きっと、それだけの実力だったんだ。
…辰巳さんより、劣る。
銃どうこう以前の問題に、運動神経の問題だと僕は思った。

