「もしもし??僕。はいはい、それより弥刀ちゃんが誘拐?されました。今○○付近を逃走中。車種△△△、ナンバーは□□□、管轄内でーす。盗車かもしれないけど、よろしく」
「おい、お嬢は誘拐されてないんだろ」
「面倒だから誘拐でいいんだよ。説明が面倒。」
サルとの通話を切る。
甚三の運転はどんどん荒くなる。
どこに行くのかも分からないくせに。まぁ、もちろん僕もなんだけど。
「そういえば甚三、弥刀ちゃんの携帯にGPSの機能追加してたよね」
親機である甚三の携帯をいじってみる。が、発信されていないので受信するわけがなかった。
「お嬢、GPSの機能をONしてねぇんだ。多分、忘れてるんだと思う」
「意味ないよねー。あ、弥刀ちゃんから電話」
「かせ!!!!お嬢!!!」
僕から携帯をふんだくった甚三をつい、冷たい目で見てしまう。
親よりも親らしいや。
「…」
「どうだった?」
すぐに切られたらしい。真顔で携帯を僕につき渡す。
「車の情報言ってた」
「それ、もう僕達知ってるからね。あ、サルだ」
サルからの着信を取る。
『俺だ。車の持ち主は誘拐なんてするようなやつじゃねぇよ、会社員さんだ。だから盗車だ。お嬢は大丈夫なんだろな?てめーが着いてて何でこんな事態になってんだよ…さすがガ』
キ、と続こうとしたその通話を切る。
「盗難車。残念だけど、弥刀ちゃんからの連絡を待とう」
「チッ」
甚三の舌打ちを遠くのほうで聞きながら、もう1度かかってきたサルの着信をとってやる。
『おいガキ!!てめぇ、大人様の言うことは最後まで聞きやがれ。多分この件、松島組が関わってる。最近女が拉致られて、ボコられるかヤられるかで被害にあってるのが多発してるらしい。お嬢はべっぴんだから多分それだ!!!松島の野郎だ!!分かったか!!』
「松島ね。はいはい。サル、僕と3歳しか違わないからね」
通話を切った。
「最近ここらへんで、松島組が女に手を出してるらしいよ。多分今回も、そう。」
「そういやぁ確かにここ最近、京極の管轄ぎりぎりで被害出てるって聞いたことあるな」
「そろそろ潰し時なんじゃない?」
「当りめぇだろ」
ふと、もう1度GPSを見てみる。
「…入ってる」
「あ?」
「甚三、ここ」
知らない土地を口で説明するのは難しい。
携帯の地図をそのまま、甚三に見せた。甚三は運転中に時々前を見ないから怖い。
「…お嬢」
「GPSの存在、思い出したみたいだね」
「おい司、手加減すんなよ。京極が廃る」
「だから僕、そういうんじゃないって。今回はたまたま」
スピードが上がって、僕の体はシートに押し付けられた。

