「僕、ここ残るよ。警察に色々聞かれることもあると思うし」
「あたしもここで待ってるね。そっちのほうが、自然だと思うんだー」
「め、芽瑠?!」
「私と弥刀ちゃんが誘拐されて、襲われているところを聞きつけた近所のやさしいおじさんAと、あとを追っかけてきた神谷くんが助けてくれた。弥刀ちゃんは怪我をしてるので、おじさんAに車で病院に連れて行ってもらった、ってことでどうかな? おじさんAは名乗らないまま帰るの」
「すごいね、僕車を追っかけられる超人的な役だよ」
あたしはよくよく考えてみる。たしかに、それなら辻褄もあう。
甚三のこの犯罪者顔も見られないですむ。
「甚三、近所のやさしいおじさんAだってー」
「うるせぇ」
司が甚三をからかう。
「その方法が、1番ベストだと思うよ。手間も省ける。それに弥刀ちゃんは、すぐに怪我の手当てしたほうがいいんじゃない」
甚三もゆっくりと頷いた。
確かに今この面はひどいかもしれないが、あたし的には全然マシな方だ。
ただ、これを甚三が許してくれる訳がないから、大人しくそうしておこうと思う。
「お嬢、乗ってください」
あたしは素直に乗り込んだ。
「司、頼んだぞ」
「芽瑠をよろしく」
「はーい」
甚三は司に目配せして、アクセルを踏んだ。
車に揺られながら、ふと自分の手を見てみる。
手のひらは黒く汚れている。きっと、車のルーフが汚かったんだ。
指先は赤くなっていた。へばりついてたときの勲章。
手の甲はあたしのじゃない血がついている。だけど所どころ、小さく切り傷もあった。
「…なんで司が居たの」
思っていたことを口に出してみた。
甚三はしっかりと前を向きながら、口を開く。
「お嬢に電話をもらう前に、あいつから電話がかかってきたんですよ。お嬢が怪しい車についてった、って。まぁ、お嬢は実際ルーフにへばりついてたんですよね?本当、無茶はやめてくだせぇよ。12代目が何でお嬢をこの世界から遠ざけてきたのか、意味がありゃしねぇ」
「…迷惑ばかりかけて、ごめん」
そうか、司のほうが先に甚三に電話をかけていたのか。
「今回は京極の下っ端全部集めて管轄内の車種を調べ上げましたからね。まぁ結局、盗難車でしたんでお嬢を発見できたのはGPSのおかげです。そういえば、いつでもGPSの発信をONにしといてくださいよ」
「あぁ、忘れてた。あれ、ONにしとく必要があったんだね。今日からは大丈夫だよ」
「まったく…」
それからも続く甚三の説教を聞き流していると、ふいに睡魔が襲ってくる。
外と車内の温度差もあるし、居心地の良いゆれ具合も睡魔を誘うものとしか思えない。
「甚三、寝るわ…」
「え、お嬢?まだ終わってませんよ」
その言葉を無視して、あたしは目を閉じた。
「あたしもここで待ってるね。そっちのほうが、自然だと思うんだー」
「め、芽瑠?!」
「私と弥刀ちゃんが誘拐されて、襲われているところを聞きつけた近所のやさしいおじさんAと、あとを追っかけてきた神谷くんが助けてくれた。弥刀ちゃんは怪我をしてるので、おじさんAに車で病院に連れて行ってもらった、ってことでどうかな? おじさんAは名乗らないまま帰るの」
「すごいね、僕車を追っかけられる超人的な役だよ」
あたしはよくよく考えてみる。たしかに、それなら辻褄もあう。
甚三のこの犯罪者顔も見られないですむ。
「甚三、近所のやさしいおじさんAだってー」
「うるせぇ」
司が甚三をからかう。
「その方法が、1番ベストだと思うよ。手間も省ける。それに弥刀ちゃんは、すぐに怪我の手当てしたほうがいいんじゃない」
甚三もゆっくりと頷いた。
確かに今この面はひどいかもしれないが、あたし的には全然マシな方だ。
ただ、これを甚三が許してくれる訳がないから、大人しくそうしておこうと思う。
「お嬢、乗ってください」
あたしは素直に乗り込んだ。
「司、頼んだぞ」
「芽瑠をよろしく」
「はーい」
甚三は司に目配せして、アクセルを踏んだ。
車に揺られながら、ふと自分の手を見てみる。
手のひらは黒く汚れている。きっと、車のルーフが汚かったんだ。
指先は赤くなっていた。へばりついてたときの勲章。
手の甲はあたしのじゃない血がついている。だけど所どころ、小さく切り傷もあった。
「…なんで司が居たの」
思っていたことを口に出してみた。
甚三はしっかりと前を向きながら、口を開く。
「お嬢に電話をもらう前に、あいつから電話がかかってきたんですよ。お嬢が怪しい車についてった、って。まぁ、お嬢は実際ルーフにへばりついてたんですよね?本当、無茶はやめてくだせぇよ。12代目が何でお嬢をこの世界から遠ざけてきたのか、意味がありゃしねぇ」
「…迷惑ばかりかけて、ごめん」
そうか、司のほうが先に甚三に電話をかけていたのか。
「今回は京極の下っ端全部集めて管轄内の車種を調べ上げましたからね。まぁ結局、盗難車でしたんでお嬢を発見できたのはGPSのおかげです。そういえば、いつでもGPSの発信をONにしといてくださいよ」
「あぁ、忘れてた。あれ、ONにしとく必要があったんだね。今日からは大丈夫だよ」
「まったく…」
それからも続く甚三の説教を聞き流していると、ふいに睡魔が襲ってくる。
外と車内の温度差もあるし、居心地の良いゆれ具合も睡魔を誘うものとしか思えない。
「甚三、寝るわ…」
「え、お嬢?まだ終わってませんよ」
その言葉を無視して、あたしは目を閉じた。

