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どきりとした。

そうだ、聞きたかったこと。

司の、本音。

どういう考えなのか、どういう気持ちなのか。それを知りたい。


京極の当主を投げ出した理由でもない。
そんなんじゃなくて、ただ、司の考えている事を知りたい。
いきなり突き放されたから、もっと気になってしまった。

「…待って、聞いていいの?」

あたしごときが。
司のことを何も知らない、へたしたら不快な言葉を言ってしまっていたかもしれないあたしに、司の大事なことを聞いてしまっていいんだろうか。

「…なにいってんの、弥刀ちゃんだから聞いて欲しいんだよ」

頭を撫でられた。
慣れない感じに、体が強張ってしまう。
いつもの司じゃない感じがした。暗いから、顔はよく見えない。いまどんな顔をしているのか、怒っているのか、笑っているのかも分からない。

「そんなね、大した話じゃないんだ。ただ、僕の口から、京極家から身を引いた理由を話しておきたいんだ」

あたしはただ、耳を傾けた。

「…あんまり記憶は無いけど、僕は孤児院で育ったんだ。僕が本当に小さい時、片親だった母に預けられたまま、今まで過ごしてきた。
そこの環境が嫌だったとかじゃないけど、どうしても、学校とかに行って外に友達ができると、そっちのほうが楽しい。
高校くらいから院にも寄り付かないで遊びまわってたら、いつの間にか限度が分からなくなった。
せっかく受験した高校には行ってないし、警察沙汰になったことがあるし、色んな人に迷惑かけてた。

孤児院を出て、学校辞めて、1番仲良かったレイジとつるんでいたら、いつの間にか同じような奴が集まってきた。
みんな常識に合わせられない奴ばかり。そんな奴らと居るのが楽しかったし、安心したのも事実。


…2年前、はじめて辰巳さんに会ったんだ。

いつも通り売られた喧嘩を買ってた。ただ、その日はたまたま辰巳さんの縄張りの中で遊んでて、たまたま大人数を相手してただけ。
多分、縄張りの中で暴れていたから、鎮圧する為に駆けつけたんだと思う。

僕、その時何も考えてなかったから、駆けつけた辰巳さん達を相手側の予備軍みたいなものと勘違いして、喧嘩したんだ。

まぁ、なめてたよね。付け上がりすぎたんだと思う。
辰巳さんには勝てなかった」

そこであたしは顔を上げた。

そんな話、父さんから聞いてない。
父さんと司がやりあった?