沈黙に包まれたエレベーター内を過ごして、僕は自分の部屋のドアを開けた。

まだごちゃごちゃ言って、帰ろうとする弥刀ちゃんを部屋の中に無理やり押し込む。

「せめてその顔、どうにかしないといけないでしょ」
「…醜いものみたいに言うけどな、これお前のお仲間さんにやられたんだけど」
「だから責任とってるじゃん」

玄関先で突っ立って居る弥刀ちゃんを置き、僕は靴を脱いで部屋にあがった。

「なにしてるの。はやく入ったら??」

僕がそういうと、弥刀ちゃんの気に障ったのか、半ばやけくそに部屋に入り込んだ。

ソファに弥刀ちゃんを座らせて、救急箱を探す。

ここの所とんと怪我をしなかったから、救急箱が活躍しなかったんだよなぁ。どこに仕舞ったんだっけ。

探している間に、濡らしたタオルを弥刀ちゃんに渡す。

さっきまで鼻血出してたし、顔中痣だらけだ。まるでレイプされたみたい。絶対彼女においては無いとおもうけど。

「司、水ちょうだい」
「なにするの?」
「いや、飲みたいだけ」

僕は素直に水を取りに行った。
まさか浴びるんじゃ…、と思ってしまったけど、ただ喉が渇いただけなのか。随分ひどい思い込みをしてしまった。

コップを弥刀ちゃんに手渡して、弥刀ちゃんがそれを飲む。
まるで、親鳥が雛鳥にエサを与えているみたいで、悪い気はしなかった。

水を含んだ瞬間、弥刀ちゃんは顔を顰めた。

「どうしたの」
「…お前の家の水、血が入ってるんじゃないか」
「そんなわけ無いでしょ。口切ったの?」
「そうみたい」

まぁ、無理もないか。これから食事が可哀想。

空になったコップを受け取って、探し出した救急箱を持っていく。
弥刀ちゃんは怪訝そうにそれを見た。

「なにそれ」
「絆創膏とか、消毒液とか」
「そんなの持ってるんだ、意外」
「僕もたまに怪我するから」

弥刀ちゃんの前にしゃがみ込んで、救急箱から脱脂綿と消毒液を取り出す。