「ひどいね、顔。誰にやられたの?」
「あんたのお友達だよ」
「レイジ?金髪の?」
「顔に斜めキズある男と、髪の毛ストレートの女と、金髪だよ!」
「へぇ、流石弥刀ちゃん。相当暴れたんでしょ、レイジが鼻血出してたもん」

ふと鼻の下を擦ってみる。
ざらりとした感触がして、指を見てみると血の塊。やっぱり鼻血固まってた。

「ちょっと、あたしも鼻血出てんだけど。あの男の鼻血よりこっち心配しろよ」
「そのぼろぼろの顔で平然と歩ける弥刀ちゃんの魂なら大丈夫」

あたしは固まった血をごしごしと服の裾で拭った。
赤黒いパリパリした血の塊が、不規則に付着する。
量からして、あたしかなりひどい顔してんだろうなぁ。

「…なんであんたらのお仲間は、あんないいとこ住んでんの」
「家じゃないよ、あそこは。集合場所とか、そんなとこ」
「でもあんなでっかいマンション、どうやって手に入れたんだよ」

司は振り返った。
あたしの顔をまじまじと見る。

「なに、まだわかんないの?普通に考えて、薬とかでしょ」
「はぁ?」

薬?まさか、こいつの言う薬って、あっちの薬か。

「なんでばれないんだよ」
「上手なんだよ、あいつら。伊達に人生逸れてないよ」

真っ直ぐ向いて、すたすたと歩く司の背中を見た。
冷たい外の空気を、太陽の温もりが暖めてくれる。

「…司もやってんの」
「僕はそういう面倒なことはしない。ただ、たまに顔出すくらい」

“面倒なこと”で片付けるんだ。
あそこの不良グループ、相当悪さしてるぞ。いつ捕まってもおかしくない。
それを見つからないようにしているから、たちが悪い。


「ねぇ、ここ」

司は1つのマンションの中に入っていく。
以前、あたしはここに来た事がある。

「なにとまってんの、はやく。寒い」

腕をつかまれて、マンションのエントランスに入れられた。

「…あんたの家なんだけど」
「そうだけど?」

エレベーターに押し込まれた。
さっさと扉を閉めてしまう司。