「報復、はそのまま。俺等の仕事を邪魔した奴・俺等に害を与えた奴への報復」

さっと血の気が引いた。
まんまドストレートの意味だった。

少し前に言っていた。そういえばあたし、こいつらの言う“お仕事”を邪魔したんじゃないか。
いや、あたしとしてはそんな気さらさらないけど。

「…じゃああたしは、このままリンチ?」
「…知らん。今日は、あいつが来るんだ」

金髪は視線を泳がせた。
その途端に、空気がざわりと淀んだんだ。

他のみんなが、一気にどよめき始める。

「え、レイジさん、今日あの人来るんですか?」
「そうなんだよ。いつもは来ない癖して、今日だけ顔出すらしいぜ。あいつ、気まぐれだから」

あたしは知らず知らずのうちに、顔をしかめていたみたいだ。
なんだ、組織じゃないとか言っておきながら、しっかりリーダーはいるんじゃないか。
どうやら、かなり恐れられているっぽいな。どんな奴なんだ。鬼か。
立派な組織じゃないか。上下関係とかあるっぽいし。

まぁ、でもなんだ。京極家の名前がかかっているんじゃなくて、あたし個人の問題だから、まだよしとしよう。
京極家に唾をかけられたのかと思ってしまった。
そうなったらあたしだって、やすやすとここで座っていたりしない。


そして、一瞬で部屋が静寂に包まれた。
なんだろう、いきなり授業が始まった、みたいな。

まるで水が打ちつけられたみたい。

あたしは何が起こったのか分からなくて、とりあえず周りを見渡した。

「ごめんごめん、遅れた」


その声を聞いて、その姿を見て、あたしは息を呑んだ。

長身と、ひょろっこいその体と、甘ったるい匂い。声。
それはあたしがよく見ていた人だった。

「おっせぇよ、司。自分から行くとか言っておいてよぉ」
「ごめんごめん、ちょっと、いろいろあって」

あたしは瞬きすらもできなかった。
そいつは優雅にソファに深く腰掛ける。

ちょっと待った。

今の今までここに居る全員が慄いていた存在。


「つか、さ?!」

あたしが良く知る、当主の座を争うライバル。司。

「おい!てめ、なにタメきいてんだよ」

がつんと頭を近くの女に殴られる。
いやでも、え?
殴られた事なんて頭に入ってこなかった。

「なんで、ここに…?」

疑問がいっぱい湧いて出てくる。聞きたいことがありすぎて、何を聞けばいいのかが分からない。