「修学旅行楽しみーっ」
と言う私に、

「うん。去年のクラスも宿泊学習で仲良くなったしね」
とスズミヤが言う。

「あー、そそそそそ!」
と言う私に、

「ハルカワって相手と同じ意見だとそそそ連発しすぎじゃない?」

「あー、それ自覚あるわぁ」
と言って自分で笑った。


こんなふうに“ハルカワってだよね”と言われるのが嬉しかった。自分を理解してくれてるからかもしれない。




掃除の時間、めげずに

「ねぇスズミヤー。絶対好きな人居るよねー?」
と問いつめるが、こちらに目も合わせずに

「いないってば。掃除やんなさい」
と言う。

「いそうなんだけどなー」
と言って雑巾を振り回す。

スズミヤはほうきを使っていた手を止めて、

「…なんでそう思うの?」
と私に問う。

「勘」
と即答する私に呆れた視線を向けた後、数回頷く。



掃除をしたくないけど怒られるのは嫌な私は、先生が目の前を通る度に雑巾を水道で濡らすフリをする。


あーちくしょ、なんで人通りの多い通路なんだよ。


「ねえ」
といきなり声を掛けられて肩を上げて驚いてしまった。

「ちょーびっくりしたよスズミヤ!!」

「悪いことしてるからでしょ」
と笑いながら言う。

「どしたのどしたの」
と聞くと、彼女は逡巡してから

「誰にも言っちゃだめだからね?」
と前置きを言う。