「明日葉さん!?」

俺の言った一言により、明日葉さんが屋上を飛び出していった。

「俺…なにかまずいこと言った…?」

勝手なこと言わないで、と珍しく声をあらげた彼女の声は悲痛で、なぜか胸に刺さった。

そして、屋上を飛び出す前に見た顔は、とても、悲しそうで、苦しそうで、今にも泣きそうだった。

俺は、気付けば彼女を追いかけていた。

(ほっとけない)と、瞬時に思ったんだ。

案外彼女はすぐに見つかった。

人目のつきにくい場所で、1人、肩を震わせて静かに泣いていた。

「ハァハァ…あ!明日葉さん発見!」

「!?こ、駒瀬くん…なんで……」

肩をびくつかせると、驚いたように顔を上げた。

「いや、その、謝ろうと思って…明日葉ののこと何も知らないくせに、偉そうなこと言ってごめん!」

「駒瀬くん…」

「それで、1つ提案があるんだけど、聞いてくれないかな?」

「提案?」

「そう!」

彼女は首を傾げた。

「俺がついてる。だから、一緒に克服してみない?」

気づけば俺は、そんな事を口走っていた。

「どういうことです、か?」

「何かは分かんないけど、明日葉さん、過去に何かあったんでしょ?」

人に言えないこと。
君は、何かに怯えてるんだ。

「え…」

明日葉さんが意外そうな顔をする。

「まぁ、俺の推測だけどね。だからさ、俺が明日葉さんを守るよ。」

【なぜ】かなんて、わからない。
でも、守らなきゃって、思ったんだよ。

俺が、彼女の小さな小さな背中を、二度と悲しませないように、守るんだって。

グイ

「こ、駒瀬くん!?」

彼女の驚いた声にハッとすれば、俺はいつの間にか彼女を引き寄せ抱きしめていた。