私の青春の1ページは、ここから始まった。

それは、まだ少し肌寒い5月のこと─────



「うーん…!やっぱり屋上は風が気持ちいいなぁ~」

明日葉 葉子、14歳。中学3年。
趣味は読書と裁縫と料理。
それから…
 
【空を見ること】

キーンコーンカーンコーン

遠くで始業のベルが聞こえた。

「ハァ…今日も、サボっちゃった。」

最近の私は学校にはくるけど、来たあとは即屋上に移動。

これでも先月まではちゃんと授業を受けていた。

サボるようになったのは今月に入ってからだ。

それでも卒業出来るのは、私が中学生で義務教育だから。

それも、今年で終わり。

いい加減、進路を決めなくてはならない。

「高校生になれば、少しは変わるのかな…?」

今のところ目星をつけているのは、私立の女子校。

それと、県外のちょっとレベルが高いところ。
寮があるので、受かれば寮生活だ。

とにかく私は、一刻も早くこの学校を出たい。

卒業して、【あの出来事】を忘れたい…

「…早く、卒業したいな。」

そんなことを呟いていると、階段を駆け上がってくる音が聞こえてきた。

(…誰かくる?)

私は、とっさに身を隠した。

ガチャン

「おー!誰もいねー!」

(あれは…確か………同じクラスの、駒瀬くん?)

少し顔を覗かせてみる。

すると、いきなり彼が振り向き、思わず目があってしまった。

私は、目をそらした。

「あれ?人がいた!ってか、君…えーっとー…あ!!わかった!同じクラスの明日葉さんだ!!」

「ど、どうも…」

私は俯きながら軽く会釈した。

「なに、明日葉さんもサボりー?」

はははっと、彼が冗談めかして笑った。

「まぁ…」

私は、彼の顔が見れなかった。

照れているわけではない。

確かに、彼は顔が整っていてクラスでも人気者だが、断じて好きなどと言う感情があるわけでもなく、眩しすぎて直視できない!って感じでもない。

私は、人の顔が見れないのだ。

なぜなら私が、人間恐怖症だから──────