「恭は、優しいよね。」
恭のたまに見せる優しさに触れると、なんだか心の奥が、ほっこりとした気持ちになる。
『は?』
私の言葉に、恭は不機嫌そうな声色でそう返す。
『優しいとかじゃないから。自分の周りに居る人をとやかく言われたくないだけ。』
きっと、電話越しの恭は無表情で全てどうでも良さげな顔しているんだろうな。それか、不機嫌に顔をしかめているのかな。
なんて、恭の表情を想像したら、自然と笑みがこぼれてくる。
『何笑ってるの、気持ち悪い。』
そう言いながらも、どこか柔らかい声。
『心配して損した。時間の無駄だったようだね。』
なんて、恭のイヤミも、私にとっては幸せな一言でしかなくて、また少し恭への気持ちが膨らむ。
「ねぇ、恭。」
『…まだ何か用があるの?』
面倒くさそうに、分かりやすくため息を吐く恭。それでも、電話を切らないのは、恭なりの分かりにくい優しさ。
「私、恭のこと幸せにしたい。」
私がそう言えば、電話の向こう側から、再び聞こえるため息。
『くだらないこと考えてないで、明日の講義に備えて早く寝なよ。ーーじゃ。』
呆気なく切られる電話。でも、幸せ一杯な私。
「俺が幸せになんて、なれるわけないだろ。」
恭がこの時何を考えているかなんて、その時の私には予想もつかなかった。

