「ちょ、ちょっと待ってよ!最後くらい、もう少しゆったりと、っ!?」




しかし玄関に出る直前で、田中が急に止まったものだから、ゴチーンと、あたしは思い切り田中の背中に鼻を強打してしまった。




「な、なな何!?痛…」




堪らず文句を言おうとしたあたしに、田中の影がかかる。



そして




ふっと一瞬、ほんの一瞬



唇が重なった。





…優しくて、本当に触れ合うだけの





「キス!?!?」



「大声出すなバカ!!」




顔を真っ赤にした田中が、あたしの頭を叩く。





「痛っ!だだだって、初めて…」




…たぶん、そんな田中以上に、今あたし、真っ赤なんだろうな。






「いいだろ別に…最後の思い出作り、だよ」





田中が照れたように顔を逸らしてあたしの手を握る。



そして、玄関の扉を開いた。






「言っとくけど。

…離す気ないからな」




「…あ、あああああたしも!
こ、ここここれからも、よっよろしくね!?」



「噛みすぎだろ…」