「あたし…花凛ちゃんが羨ましい」



「…え?」




思わず零れた言葉に、田中が怪訝そうな顔をする。





「羨ましいよ…だって田中に、そんなに想ってもらえて」




…こんなの、もう告白しているようなものだ。




でも、一度溢れ出した気持ちは、簡単には止まってくれない。




「田中が今すごく苦しいの、わかってる。

でも…そんな田中といるの…辛い」




田中の心には、いつも花凛ちゃんがいて、あたしはそこに、ずっと入りたかった。





「…それ、どういう…」




田中の言葉が、全て言い終える前に





「っごめん!」





立ち上がって、そのまま玄関から飛び出した。





「おいっ…!」





焦ったような田中の声が、ドアの向こうに消える。




こんなはずじゃなかった。



…いつも思い通りにいかない。




恋は、もっとキラキラしたものだと思ってた。だけど全然そんなんじゃない。



辛くて苦しくてどうしようもなく泣きたい。



好きな人は、あたしのことを好きじゃない。