「だってあのライバルの子手強そうだし?
諦めて俺のところに来なヨ~♪」




そして両手を広げる瀬名晴人。





「それは嫌」


「えっ即答!?」




ショックを受けている瀬名晴人は無視して、中庭に背を向けるようにして、壁に寄りかかる。






「…あたしだって諦めたいよ」





こうして二人が一緒にいるところを見る度にこういう気持ちになるのは……正直、しんどい。





でも…




「そんなに田中クンが好き?」





ふ、と横を見ると、瀬名晴人があたしと同じように壁に背を預けて、立っていた。






「……分かってるよ。こんな事してたって、意味ないって。


花凛ちゃんの方があたしより全然可愛いし、女の子らしいし…」





「でもまどかチャンは、顔で田中クンを好きになったわけじゃないでしょ?」







ニヤ、と口角をあげる瀬名晴人。







「だってそれなら、絶対的に超絶イケメンな俺を選ぶハズだし☆」




「………」




「えっ無視!?」








…外見なんかじゃない。





素っ気ないけど、実は誰よりも優しいところ。




いつも、周りを気にかけてるとこ。






こんな、ただの同居人のあたしだって









“…何度だって助けてやる”









…いつだって、助けてくれる。








はじめは、ただ何の関わりもないクラスメイトだったけど。





今は田中のことをたくさん知ってしまったから。








だから









簡単になんて諦めきれない…。