「…周防にくっつくな」
旭さんから返されたスポンジを、グシャリと握り潰す田中。
旭さんはそれを見て一瞬顔色を変えたが、やれやれとため息をつくと
「光さー、それ、やきもち?」
ヘラヘラしながらそう言った。
「…は?」
ますます眉間の皺を濃くする田中。
「何でそうなんだよ。俺はただ、兄貴が女癖悪いの知ってるから、周防がその被害者にならないようにっ…」
「あーハイハイ、わかった、もーいいわ。
んじゃ、俺まどかちゃんとベランダで大事な話してくるから」
「ここでしろよ」
「やだよ。言ったろ?大事な話だって」
冷蔵庫を開けて、サイダーの缶をふたつ、取り出す旭さん。
「覗くなよ?」
そして田中に対してニヤッと笑うと。
「別に変なことはマジでしないし。
んじゃ、行こまどかちゃん」
「あ、はい…」
リビングを出る寸前、チラリと後ろを見ると
田中は相変わらず深刻そうな顔して、あたし達を見ていた。
…そんなこわい顔しないでよ。
…ちょっとだけ、ほんの少しだけだけど。
期待しちゃうじゃん。
旭さんの言うように、やきもちだったらいいなって…
ほんの、少しだけ、だけど
…思っちゃうじゃんか。



