「おはよ~…って、どうしたの?田中」




朝起きてリビングに行くと、田中がソファに座って頭を抱えていた。





「…アイツのいびきが五月蠅くて、眠れなかった」



「旭さんの?」




確かに、今も田中の部屋からは、グオーッ、ガオーッという物凄いいびきが聞こえてくる。




「ったく、いつまでいる気なんだ、アイツ…」



フラフラしたまま立ち上がり、冷蔵庫からキュウリとレタスを取り出す田中。




どうやらサラダを作るらしい。





「早く帰ってくれないと、寿命縮まる」



「おいおい、兄貴に向かって随分な言い草だなーっ」



「旭さん!」




振り向くと、田中のジャージを着た旭さんが、いつの間にかソファの後ろに立っていた。




「おはよう、まどかちゃん!今日もカワイイね♪」




爽やかな笑顔で、そんなことを言ってくれる旭さん。





「ど、どうも…」


「おいセクハラ野郎」




ザクリと、田中がレタスを切る音が、リビングに響いた。





「どうでもいいけど、あんま周防に近づくな!」



「は?何でだよ?お前の彼女じゃないんだろ~、まどかちゃん」




そしてわざとらしくあたしの肩に触れる。




「あれ、まどかちゃん。なんかいい匂いする~♪」




ガチャンッ!




何かを落としたような大きな音が響いて、見ると田中が包丁片手に、物凄い形相でこちらを睨みつけていた。





「……さ、大学行く支度しなきゃな~」





命の危険を感じたのか、旭さんがそそくさとあたしから離れる。





「あ、光!俺、朝ご飯はフレンチトーストがいいナ~♪」


「勝手に食ってろ!」





旭さんの顔に、食パンが入った袋ごと投げつけられた。