「……だから離れんなって言ったのに」




「…え?」




呟くように言った田中の言葉に顔をあげると、田中はチラッとあたしを横目で見て



でも、すぐに目を逸らした。





そしてあたしを見ないまま、ぶっきらぼうに言う。




「…だから嫌だったんだよ。

だから俺から離れんなって言っただろ!?

こーなるって分かってたから…


もうちょっと危機感持てよ色々。バカ」




ば、バカ!?




…でも、なんとなく



分かっちゃったかもしれない。





田中が昨日、「はなれんな」って言ってくれたのは


珍しくメイクなんてしたあたしを、すごく不機嫌そうに見てたのは




「…心配してくれてたの?」



「……さぁ」




…さぁ、って…




「…ありがとう。助けてくれて」



不自然に向こうを見てるから、田中の表情は見えないけれど。



でも、言いたいよ。





「…いつもあたしを助けてくれるね、田中は」





すると、田中はやっとあたしに視線を戻して




ちょっとだけ笑った。





「…仕方ねーだろ。同居人のよしみ、ってやつ?



…何度だって助けてやる」