夜。
あたしはリビングのソファに一人、座っていた。
テレビでは今人気のお笑い芸人が、流行りのギャグを披露しているらしいけど、あたしの耳には全く、何も入ってこない。
…とりあえず一言、謝ろう。田中に、昨日のこと。
こ、告白するとか、しないはまだ、置いといて。
同じ家に住んでるっていうのに、今朝も、学校から帰ってからも、一言もまともに喋ってない。
こんな気まずいの、嫌だし…。
今田中はお風呂に入っている。
お風呂から出たらたぶん、いつものように紅茶片手にソファでくつろぐだろうから、その時に「周防」
「はいっ!?」
突然名前を呼ばれて顔をあげると、両手にマグカップを持った田中が見下ろしていた。
「たっ、田中!?え、お風呂は!?」
「…とっくに出たけど」
「え!?そ、そっか…」
いつの間に…
激しく動揺するあたしの前に、コツン、と置かれるマグカップ。
中には…ココア。
あれ、珍しい。いつも田中、紅茶なのに…