「……いやだ、いやだ、いやだよぅ……」
勝手に口が開き、うわごとを呟くかのように言葉を紡ぎ始めた。
その後も、私はずっと「怖い」「嫌だ」と何度も繰り返すばかりだった。
『…………』
私は意を決して(といっても、別に何かに躊躇していたわけではなかったけれども)、言葉を紡ぎ続けて震えている唇から言葉を漏らした。
「……どうしたの?」
私が最初に発した言葉は、何者かわからない「私」に対する呼びかけだった。
「……こわい、こわいんだ……」
一瞬、言葉に間が空き、その後すぐに「私」は私の問いかけに答え始めた。
「……何が怖いの?」
「……こわい、こわいこわいこわいっ……!!」「いやだ、こわいこわいこわい!」
「…………」
「私」はそうずっと繰り返していた。私はただ、「私」が話し始めるのを待っていた。やがて――
「……欲しい、存在が欲しい……」
やっと「私」が話し始めてくれた。
『存在が欲しい』。それが「私」の抱えていた意思のこもった返事だった。
