「……こわい、こわいこわいこわいこわい……」
自分でも何を言っているのかわからなかった。体の上に掛かっている薄い掛布団を引っ掴み、まるで何かに怯えている子供のように、頭を押さえ込むように掛布団の中に潜り込んだ。
震えながら、掛布団を強く握っていた。ただ本当に、純粋に、怖がっていた。
「……うぅっ、ひっく、ひっく……ぅうううっ!!!」
ついには泣き出してしまった。おいおいおい、どうしたんだ? 何があったんだ、私は。
『…………?』
でも、この泣き方にはどこか聞き覚えがあった。
『……これは、あの日お母さんに放置されたときの……?』
「ひっく、ひっく、うぁぁ……」
そうだ。この泣き方は、2日前にお母さんとお婆ちゃんとで心療内科にいった帰りに、お母さんが車を取りに行くと言って、そのまま2時間以上待たされて、私は医院の建物の前でしゃがんで泣いてしまったのだ。これはあのときの声と同じだった。
ただし、あの日と決定的に違っている点をひとつ挙げるとすれば、私を支配している感情(恐怖)の質が違う。
あの日は確か、置いて行かれた恐怖よりも、課題が残っているのに時間がどんどんと過ぎ去っていくことに対して苛立ちと恐怖を覚えていたのだ。
