『……やっぱり、まだ私のことを警戒しているのかな?』

と思っていたら、彼はすんなりと私の横へと向かって歩いてきた。
 表情は、やはり無表情のままだった。

「一緒に布団に入る?」

 
私は笑顔で、掛布団の端側を持ち上げて彼を誘う体制をとった。
 
一瞬、彼の顔が少し驚いたような表情になった。
 
そして無表情のまま、彼は私の掛布団の中に入った。
 
私は自分のすぐ近くにある彼の白い顔を見て、彼の頭を両腕で優しく抱き締めた。
 
不意に、私の頭の中に悲しみと戸惑いの感情が流れてきた。
 
私は暫く彼と同じ布団で一緒に入ったまま、そしてまだ解明されていない「とあること」を訊いた。

「ねぇ、もし大丈夫だったら、きみの名前を訊いてもいいかな?」

 
彼は私が認めたことで「もう」存在しているのだ。彼に名前があるのなら、ちゃんとその名前で呼んで、もし名前がないのであれば、彼に名前をあげればいい。

「……秋人(あきと)」

 
そう彼は短く答えた。