強引に連れられて行った先は、やっぱり生徒会長室。
部屋に入るなり、仁は思いっきり私を壁に押し付けた。

ダンッ

!?

私の顔の横の壁を殴りつける仁。
びっくりしすぎて声も出なかった。


「はぁ…」


俯いて一つ息を吐く仁。
どこか弱いため息。


「やべー…
もう耐えらんねーよクソ!」

「じ…ん…」


俯いていた顔を上げて真っ直ぐ私を見る。
やっぱり仁の瞳は寂しそうな目をしていた。

前もこんな目してた…
どうしてそんな目で私を見るの…?


「なぁひかり…」

「なに…?」

「どうしてお前は昂之心のものなんだ…?」

「えっ…」


悲痛な表情で私に質問する仁。

今更なに言ってるの…?
あの時確かにキスして契約し…へ?

一瞬頭が真っ白になる。

あの時…?
あの時ってなに…


「ひかり…俺との契約忘れたのか?」

「けい…やく?」


うっすら頭に浮かぶ記憶。
確かに私はあの時、この状態と同じ状況で仁に言われた。
そして…契約のキスをした。


「忘れるな…
オレとのこと、お前の気持ち。
全部思い出せ…」

「あ…」


私…

一気に中学校3年生の頃からの記憶がフラッシュバックする。


「お前は…オレの女なんだよ」


思い出した…
中学校3年生の時、仁と付き合った。
その後事故で記憶を失って、仁のことを神風さんと呼んだ。
それから仁と会わなくなってから忘れていって…
高校2年になって、仁と再会しても気づかなくて。
だけど…
仁と付き合っていた記憶がなかったけど…
私は仁に…恋してた。
その気持ちすら忘れてしまって、私はコウが初恋だと思ってた。


「じ…ん…」

「ひかり…?」


自然と涙が溢れる。
なんで溢れるかはわからない。
だけど勝手に涙がこみ上げる。


「なんで泣いてんだ…」

「わかんない…
だけ、ど…記憶、思い出したから…」


涙が止まらない私を、優しく仁は頭を撫でてくれる。

そんなに優しくしないでよ…
私にはコウがいるのに…!
なんで気持ちが揺らぐの…?

苦しくてたまらない胸。
やっぱり仁のことを考えると苦しくなる。


「ひかり…オレの話しを聞いてくれないか?」

「う…ん」

「今年の文化祭は…オレの最後の文化祭だ。
だから、今までにないくらいビックなイベントをしようと思ってる」


少し嬉しそうに笑う仁。
その笑顔を見たら、自然と涙が止まっていた。


「なに…?」

「今年は、お前を目立たせるイベントをするつもりなんだ」

「へ!?」


私を目立たせるって…!
怖い…!


「大丈夫だから。
オレにいい考えがあんだよ」

「いい考え…?」


ニヤリと笑う仁。
少し不安になる私。

仁の考えることだから…
すっごく本当に目立つことなんじゃ…!


「とりあえず、後で生徒会メンバーでミーティングする予定だ。
そん時に言う」

「じゃ、じゃあ…
今私をここに呼び出した理由はなに…?」


胸がドキドキする。
いきなり真剣な目になる仁。
仁に私の鼓動が聞こえそうで恥ずかしくなる。


「…ひかり」

「は、はい…!」


ごくりと一つ唾を飲む。
少しの沈黙が流れる。


「ワリー、なんで呼び出したか覚えてねー」

「へ…」


ハハハと笑う仁。
私は開いた口が塞がらないでいた。

な、なんだぁ…

一気に身体の力が抜ける。


「ワリーな、ひかり」

「い、いや…大丈夫」


よくわからないまま、生徒会全員でのミーティングの時間が近づいていた。